「実は、ウェブでは、『惣菜中のセレウス菌芽胞の制御における加熱処理の効果』の抄録しか読めないので、なぜ、2回加熱したかについては分かりません。」

「それは残念ですね」と町会長。

「一般財団法人東京顕微鏡院の『加熱しても死なない食中毒菌 1.セレウス菌による食中毒』というウェブページに、『セレウス菌は加熱してもなぜ死滅しないか?』という項目があり、『セレウス菌は発育の段階で生育に不利な条件となると芽胞と呼ばれる特殊な構造物を作り、悪条件下でも生き延びます。芽胞は増殖しない休眠状態です。芽胞膜は頑固な構造をし、通常の加熱調理温度でも死滅しませんし、乾燥条件でも長年月にわたり生存できます。生育条件が整ってくると芽胞が発芽をし、増殖状態(栄養型)に形態が変化します。増殖型は芽胞とは異なり、75℃の加熱で死滅いたします。セレウス菌はこのような芽胞形成することから100℃、30分の加熱でも死滅しません。』という記載があります。」

「芽胞は増殖しない休眠状態なのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「芽胞は生育条件が整ってくると、発芽して、増殖型になるのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「増殖型は75℃の加熱で死滅するのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それでは、味噌汁を煮立たせれば、増殖型のセレウス菌は死滅するということではありませんか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「『顕微鏡院』という名前だけに、しっかり観察していますね」と町会長。

「そうなんですよ。」

「それでは、『25℃4時間静置後に再加熱する』というのは、増殖型のセレウス菌を加熱して死滅させた後、生育条件が整っている25℃の環境で4時間静置して発芽させ、増殖型にしたということですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「そして、増殖型になったセレウス菌を再加熱すると、芽胞として生き残ったセレウス菌の数は100分の1以下になるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「他に、酸っぱい味噌汁作りに関係してくるような記載はなかったのですか」と町会長。

「『嘔吐型セレウス菌の病原因子に関してはこれまでにも多くの研究者が検討を進めてまいりましたが、平成6年に安形則雄博士により嘔吐毒が単離、精製され、セレウリドと命名されました・・・セレウリドは熱抵抗性があり、126℃でも破壊されないし、酸やアルカリにも安定した物質であります。嘔吐型セレウス菌芽胞は熱に抵抗性があり、米を炊く温度やスパゲティーをゆでる温度では死滅いたしません。米飯やゆでたスパゲティ-を室温に放置する間に芽胞が発芽し、増殖をして菌数が10万個以上になると食品中にセレウリドが生成されます』という記述があります。」

「芽胞が発芽し、増殖をして菌数が10万個以上になると食品中にセレウリドが生成されるのですか」と町会長。

「そうなんですよ。Google Scholarで検索しても、類似した論文はヒットしないので、東京顕微鏡院独自の研究なのかも知れません。」

「なるほど」と町会長。

2021/9/13

<猫後記2>
猫は来なくなったと思っていたが、猫はそんなに甘くはなかった。猫は自分より頭が悪い人間にしてやられるのは我慢できないのだ。今度は中庭の茶室の東にあるスギゴケの苔庭に隣接しているスナゴケの築山(つきやま)を毎日のように荒らすようになった。

スギゴケの苔庭はイノシシでも荒らすのは難しい。そこで頭のいい猫は、築山のスナゴケを荒らして筆者に思い知らせようと考えた訳だ。<続く>

2024/8/28